車と歩行者との夜間接触死亡事故96%はロービームで走行中
警察庁の発表によると2015年度夜間に、歩行者が車にはねられた死亡事故は全国で625件あり、この中で走行中にロービームだった割合が96%の527件となっています。
このような状況を踏まえ、ハイビームを使用していれば防げた事故もあったのではないかとして、警察庁は夜間走行でのハイビームの使用を呼びかかけています。
警察庁が事故軽減のために夜間のハイビーム走行を呼び掛けたことで、WEB上ではちょっとした論争となっていますが、警察庁が言うハイビーム使用は、どんな場合にでもハイビームで走行しなさいと言うものでは無く、対向車や前走車がいない状態ではハイビームを使用して遠くまでの視界を確保して、出来るだけ早く危険を察知しましょうと言うことです。
警察庁のこのような呼び掛けに対して、どんな状況でもハイビームを使うんだと誤解を受けてしまったドライバーの方々には、くれぐれも誤解のない使用をお願いします。(道路交通法が改定されたわけではありません)
道路交通法の第52条第2項では、夜間に他車両と行き違う場合や前走車の直後を走る場合に、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、ヘッドライトの消灯あるいは減光する等灯火を操作しなければならないと定められています。
この道交法のヘッドライト減光にあたるのが、ロービームに切り替える操作になります。(夜間走行中に消灯するのは違反となりますので、この操作は行わないようにしましょう)
ロービームとハイビームでの停止位置には歴然とした差が認められる
夜間にロービームとハイビームでは、障害物を発見し停止するまでにはどれ程度の差があるのでしょうか。
ちなみにハイビームは100m先まで、ロービームは42m先まで照らされるとされています。
出典:JAF Channel
JAFでの5人によるモニターユーザーテストでは、時速80kmでハイビーム走行中の場合で、障害物を認識し停止した位置は、最も近くで停止したユーザー44m手前から、最も遠くで停止したユーザー111m手前で平均すると82m手前の結果でした。
次に時速80kmのロービームで走行した場合の障害物までの停止位置は、1m手前から15m手前と一気に障害物までの位置が近くなっています。平均値は5.6m手前です。
最後に時速100kmでロービーム走行した場合は、障害物手前で停止できたのは1人のモニターユーザーのみで、残り4人のモニターユーザーは全て障害物までに停止することが出来ず、接触しオーバーランして停止しています。
停止位置は1m手前から13mオーバーで平均は5.8mオーバーとなり、接触後5.8m地点で停止したことになります。
この結果からハイビームにすることにより、事故の回避率が大幅に上昇することが推察されます。
ハイビームとロービームを自動で切り替えドライバーの負担を軽減する車種
ハイビームが使用出来る状況では積極的に利用して、事故を回避したいところですがロービームからハイビームへの切り替えを、頻繫に行わなければならない状況では、操作が煩わしくなり、ついついロービームのままで走行しがちになってしまいます。
この負担となるハイビームとロービームの切り替えを自動で行い、夜間走行の安全に大きく貢献し、ドライバーの負担を軽減するシステムを搭載した車種が、各自動車メーカーから発売されていますので、車を購入する場合には検討するのも良いと思われます。
トヨタ
トヨタはAHB(Automatic High Beam)と、AHS(Adaptive High-beam System)の、二つのヘッドライトコントロールシステムを持っています。
AHBはハイビームとロービームの切り替えを行いますが、AHSではハイビームのままで、前走車や対向車が眩しくなる部分の光にカバーを掛けて遮光し、眩しさを抑える進んだシステムです。
AHBが搭載出来る車種は
- アクア
- エスティマ(ハイブリッド)
- アリオン
- カローラアクシオ(フィールダー)
- アベンシス
- ノア/ヴォクシー/エスクァイア
- シエンタ
- ヴィッツ
- オーリス
- スペイド
- ポルテ
Tyota Safety Sense Cの装備車に備わります。
- プリウス
- ランドクルーザー
Tyota Safety Sense Pの搭載車に備わります。
- カムリ(ハイブリッド“レザーパッケージ”、ハイブリッド“Gパッケージ”にメーカーオプション)
- プリウスα(メーカーオプション〈除くS“Lセレクション”〉)
- MIRAI
- アルファード(ハイブリッド車:Executive Lounge、G“Fパッケージ”、SR“Cパッケージ”に標準装備。ガソリン車:Executive Lounge、GF★、SA“Cパッケージ”に標準装備)
- ベルファイア(ハイブリッド車:Executive Lounge、V“Lエディション”、ZR“Gエディション”に標準装備。ガソリン車:Executive Lounge、VL★、ZA“Gエディション”に標準装備)
- ハリアー(PREMIUM“Advanced Package”、PREMIUMに標準装備)
AHSが装備されるのは
- クラウンアスリート
- クラウンマジェスタ
- クラウンロイヤル(ロイヤルサルーンG〈2WD/4WD〉に標準装備。グレードによりAHB搭載車もあり)
日産
ハイビームアシスト
- ディズ(グレード別設定)
- スカイライン(グレード別設定)
スバル
ハイビームアシスト
- レガシィ B4/アウトバック
- レヴォーグ
標準装備。
- WRX S4/STI
- インプレッサ スポーツ/G4
- XV/ハイブリッド
- フォレスター
アドバンスドセイフティパッケージ装着車に装備。
ホンダ
ハイビームサポートシステム
- レジェンド
マツダ
アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)
4つのブロックに分かれたLEDを点灯と消灯させることにより、ハイビームの状態でも前走車や対向車に眩しさを与えないシステム
- デミオ(グレード別にオプション装備)
- アクセラスポーツ/ハイブリッド/セダン(グレード別に標準装備)
- アテンザセダン/ワゴン(グレード別に標準装備)
- CX-3(グレード別に標準装備)
- CX-5(グレード別に標準装備)
トヨタは生産販売車種が多いメーカーですが、ヘッドライトコントロールも安全運転支援システムに組み込み、多くの車種に対応させています。