軽自動車はスーパーハイトワゴンに人気が集中していますが、それよりも背の低いハイトワゴンは取り回しの良さや、運転姿勢が自然なポジションとなることから、扱い易さでは優れているクルマです。
このハイトワゴンのホンダN-WGNが2019年7月に、日産デイズが同年の3月にフルモデルチェンジを行い新型モデルを登場させました。
N-WGNとデイズは軽ハイトワゴンクラスでは後初組で、老舗のワゴンRとムーヴが激しいつばぜり合いを繰り広げるなか、市場に参入しさらに激しい戦いを巻き起こしています。
新型モデルのN-WGN、デイズともにプラットフォームを含め、基礎から開発が始められたクルマで、新世代の軽自動車とも言える性能をもち、小型車に負けない安定感が特徴となっています。
軽自動車のレベルを一気に引き上げたN-WGNとデイズは、それぞれ特徴のあるコンセプトで造られていますが、どちらが優れているのか比較してみます。
比べたのはN-WGNカスタム L Honda SENSNGと、デイズハイウェイスターX プロパイロットエディションです。
シンプルスタイルのN-WGNカスタム強さを強調するデイズハイウェイスター
N-WGNカスタムは四角いフォルムでレトロな雰囲気も漂うスタイルを採用し、デイズハイウェイスターは押出しの効く大きなフロントが特徴となっています。
N-WGNカスタムのシーケンシャルウィンカーに、9灯式のLEDヘッドランプは、それなりのカスタム性を感じさせますがフロントは大人しい印象です。
デイズハイウェイスターのフロントは、大きなバンパーとフロントグリル、つり目型のヘッドランプなどで威圧的な表情を作り出します。
素っ気ないほどにラインを排除したN-WGNは、シンプルな面でボディを構成し、水平に走るベルトラインがボックス型のスタイルを強調します。
Aピラーをやや寝かせたデイズハイウェイスターは、ベルトラインも最後で跳ね上げるなど、カッコ良さを意識したラインでデザインされ、キャラクターラインも多く走ります。
テールゲートを下へ伸ばしたことにより、リアコンビネーションランプを低い位置に配置し、低重心のリアスタイルをN-WGNカスタムは作り出しています。
デイズハイウェイスターのリアスタイルは、フロントと同様にしっかりとしたバンパーが特徴的です。
N-WGNカスタムのボディ面は面白さに欠けるのですが、全体的なバランスはとれていて、細部も丁重にデザインされ作り込まれている印象です。
デイズハイウェイスターはキャラクターラインにより、力強さを表現しスポーティな印象に見せようとしています。
呪縛を解いたN-WGNカスタム小型車に憧れるデイズハイウェイスター
スタイリングからはデイズハイウェイスターが、小型車に近づけようと大きく立派に見えることをテーマとしデザインされ、N-WGNはこれからの軽ハイトワゴンのカタチは、どうあるべきなのかを考えたスタイルで仕上げられています。
そのためデイズハイウェイスターのフロントナンバーは、軽自動車を感じさせないようグリル中央に配置し、ボリュームのあるフロントバンパーで押出し感を強めています。
これに対してN-WGNカスタムはヘッドランプを凝ったLED仕様としていますが、その他は至ってフツーに感じるラインで構成し、立派に見せようと努力することがなくまた、威圧的な雰囲気もありません。
最近良く言われるようになった、「馴染む」や「ジワる」を感じさせるデザインは、軽自動車らしさを追求しシンプルな良さが伝わるスタイルです。
スタイルからはデイズハイウェイスターが、これまでの延長線上で造られ、N-WGNカスタムは、そこから離れた自由な発想で生み出されたと感じます。
直線的なN-WGNカスタム丸さを取り入れたデイズハイウェイスター
インパネはN-WGNカスタムが水平で直線的なラインを多用し、シャープな印象を与えるデザインにされています。デイズハイウェイスターは曲線を使い、丸みが感じられるインパネの作りです。
N-WGNカスタムのメーターパネルはスピードメーター、タコメーター、マルチインフォメーションディスプレイを仕切るパネルが鬱陶しく窮屈な印象となっています。
丸形2眼のデイズハイウェイスターは、オーソドックスですがスッキリとした印象です。
ペダルレイアウトは右側寄りに配置された、N-WGNが明らかに快適で、自然に踏み込めるポジションと広いスペースを確保しています。さらに、テレスコピック&チルト機能があるため、最適なポジションに調整が可能です。
デイズハイウェイスターは左足が、常にセンターパネルに干渉してしまい置き場に困ります。また、ETCユニットは助手席側に露出し取り付けられており、ビルトインタイプが主流となるなか前時代的な印象です。
N-WGNカスタム、デイズハイウェイスターともに、シート表皮にはトリコットを使っていますが、N-WGNカスタムはダブルステッチを入れ見た目の質感も高めています。
太ももまでしっかりとサポートするN-WGNのリアシートは、長時間乗っても疲れ難い作りです。太ももが浮いてしまうデイズハイウェイスターは、どうしても足の向きが決まらず落ち着いて座れない高さとなっています。
N-WGNの荷室はフロア下の収納まで一体化させたことにより、テールゲートを開けると上下2段の荷物が、直接取り出し可能となっています。
デイズハイウェイスターのフロア下収納は、軽自動車としては大きな容量ですが、使い方は従来からの方式です。
リアシートの背もたれを倒すと、高い位置でフルフラットになるN-WGNに対して、デイズハイウェイスターは低いフロアですが段差ができる仕様です。
かさばる荷物は高さのあるデイズハイウェイスターが使い易いと思われますが、N-WGNの2段式フロアは荷物の大きさに合わせて、上下に積み分けられるのがメリットとなっています。
室内の完成度の高さではN-WGNカスタムデイズハイウェイスターは細部の作りが課題
インテリアはデイズハイウェイスターのネイビー調インパネに、一瞬気を引かれますが時間が経つと、やはりプラスチックだなと思わせる仕上げで、チープさは隠し切れない印象です。
インパネにはステッチを入れ質感を出そうとしていますが、ダミーのためその効果も薄く、ネイビーのカラーも中途半端な色に感じられてしまいます。
N-WGNカスタムは助手席前のチタン調パネルが、アクセントとなり質感を作り出し、インパネもプラスチックですが、色合いに深みがあり安っぽさがありません。
メーターナセルの作りにも骨太感があり、しかっりとした印象に仕上げています。
室内はN-WGNが細部まで気を配られた作りを感じさせ、ブラック&チタンカラーのシートも渋い色合で、落ち着いた印象のインテリアに仕上げられています。
デイズハイウェイスターはメーターパネルが、スッキリとして見易くされているのですが、細部の詰めが甘くインパネの質感も今一歩で、ETCユニットも助手席の足元に露出し取り付けられています。
また、リアシートの高さが子供を乗せることを前提に高さが設定されているため、大人では不足しており、用途が限定され過ぎていると感じさせます。
エンジンの低・中速域では互角高回転域ではN-WGNカスタム
N-WGNカスタムが搭載するS07B型エンジンは最高出力58PS/7,300rpm、最大トルク6.6kgf・m/4,800rpmで、デイズハイウェイスターのBR06型エンジンは最高出力52PS/6,400rpm、最大トルク6.1kgf・m/3,600rpmです。
デイズハイウェイスターは簡易ハイブリッドのS-HYBRIDのため、モーターのパワー最高出力2.0KW/1,200rpm、最大トルク40N・m/100rpmも加わります。
タイヤサイズはN-WGNカスタム、デイズハイウェイスターともに155/65R14サイズで、N-WGNカスタムはブリヂストンエコピア、デイズハイウェイスターはダンロップエナセーブを履いています。
ホイールはN-WGNカスタムがブラック塗装と、切削加工の凝ったデザインを採用し、単色で平均的なデイズハイウェイスターのホイールに差をつけています。
実際に走ると両モデルともに安定感は高く、新開発のプラットフォームは確実に進歩を感じさせ、小型車のようなフィーリングは軽自動車のイメージを払拭させるものです。
エンジンは低速域から中速域ではほぼ互角の性能を示し、デイズハイウェイスターは簡易ハイブリッドによるアシストもあることから、再始動時も静かでこの部分の上質さではN-WGNカスタムを上回っています。
しかし、エンジンの高回転域を使うようになるとデイズハイウェイスターは、騒音が大きくなりスピードも伸びが鈍くなってしまいます。
疑似的に有段式ATのフィーリングを作り出すCVTも、実質的な走行性能の改善が行われているわけではなく、体感的な違いを生み出そうとするものなので、それなりの面白さはあるのですが、進歩的な改善と捉えると「?」マークがついてしまいます。
N-WGNはN-BOXの良さを引き継いでいるため、エンジンとボディのバランスが良く、高いレベルでまとめられた走行性能は、デイズハイウェイスターを上回る部分が存在します。
特に、エンジン高回転域でのスピードの伸びや、振動の少なさはN-WGNが優れており、ストレスの少ない気持ちの良い走りは、弱アンダーステアのハンドリングとともに、高いスピード域まで扱い易い特性です。
また、N-WGNはデイズハイウェイスターよりも、ロードノイズの侵入が少なく、静粛性の高い静かな室内は、軽自動車のレベルを超えており、このことが質感を高めることにも貢献しています。
装備の充実度はN-WGNカスタムデイズハイウェイスターは誤発進抑制機能でリード
2WD | N-WGNカスタム L Honda SENSING | デイズハイウェイスターX プロパイロット エディション | ||
装備 | エアコン | フルオート+プラズマクラスター | フルオート | |
運転席シートヒーター | 標準装備 | オプション | ||
ステアリング | テレスコピック&チルト機能 | チルト機能のみ | ||
コーナリング支援機能 | アジャイルハンドリングアシスト | - | ||
フロントガラス | IRカット/UVカット | スーパーUVカットグリーン | ||
フロントドア | IRカット/スーパーUVカット | IRカット/スーパーUVカット断熱グリーン | ||
フロントクォーターガラス | IRカット/スーパーUVカット | グリーンガラス | ||
リアドア/テールゲートガラス | IRカット/スーパーUVカットプライバシー | UVカット断熱プライバシー | ||
ウィンカーランプ | シーケンシャル | ノーマル | ||
アンテナ | シャークフィンタイプ | ポールタイプ | ||
ステアリング | ウレタン | 本革巻 | ||
スピーカー | 4個 | 6個 | ||
ETC | 標準装備 | オプション | ||
予防安全性能 | 衝突軽減ブレーキ | 車両 | 自車速度5km/h以上、速度差5km/h以上 | 10~80km/h |
歩行者 | 自車速度5~100km/h、速度差5km/h以上 | 10~60km/h | ||
前・後進誤発進抑制機能 | 車両 | 10km/h以下(抑制のみ) | ブレーキアシストあり | |
歩行者 | × | ブレーキアシストあり(前進のみ) | ||
歩行者事故軽減ステアリング | 10~40km/h | × | ||
先行車発進お知らせ機能 | 10m以内 | × | ||
標識認識機能 | 60km/h以下 | × | ||
路外逸脱抑制機能 | 60~120km/h | 60km/h以上 | ||
ACC機能 | 0km/h以上 | 0~100km/h | ||
LKAS機能 | 65km/h以上 | 30~100km/h | ||
オートハイビーム | 30km/h以上 | 25km/h以上 | ||
障害物検知ソナー | 後方のみ | 前方・後方 | ||
360°モニター | × | 標準装備 | ||
価 格 | 1,587,600円 | 1,567,080円 |
装備はN-WGNカスタムが充実しており、テレスコピック&チルトのステアリングや、アジャイルハンドリングアシストで、デイズハイウェイスターをリードしています。
また、外観はシーケンシャルウィンカーとシャークフィンアンテナを装備し、360°のスーパーUV・IRカットパッケージが設定されるところも、N-WGNの有利な部分となっています。
デイズハイウェイスターは本革巻のステアリングと、スピーカー数でN-WGNカスタムの装備を超えています。
予防安全性能では機能の豊富さや衝突被害軽減ブレーキの性能の高さで、N-WGNカスタムがリードしていますが、デイズハイウェイスターは誤発進抑制機能のブレーキアシストや、前・後方向への障害物探知ソナー、360°モニターでN-WGNカスタムを上回ります。
性能とコストパフォーマンスではN-WGNカスタム大きく見せるならデイズハイウェイスター
N-WGNカスタムは高い走行性能と静かな室内をもち、インテリアも細部まで気が配られた完成度の高いハイトワゴンです。
デイズハイウェイスターとの価格差も、装備内容を考えるとバーゲンプライスと言える設定でお買い得な金額です。
ただ、スタイルはやや高い年齢層を意識し、新しいポジションを狙ったため、デイズハイウェイスターに比べると一見での分かり易さに欠けます。しかし、ギラついた威圧感が必要なく、大人のためのカスタム仕様ならN-WGNカスタムで決まりです。
デイズハイウェイスターはこれまでのカスタム路線を踏襲し、大きく立派に見せることに力が注がれ、小型車と張り合うことがテーマとなっています。
軽自動車に見えないような押出しの効くクルマを求めるなら、間違いなくデイズハイウェイスターです。