近年、グローバルで共通したクルマを販売する必要から、国内でも登録車の大型化が進み、5ナンバーサイズであったクルマが、3ナンバーサイズとなって登場することも多くなっています。
この大型化によって国内では使い難いクルマが増えることとなり、5ナンバ-サイズの良さを改めて実感するユーザーも多く、それを敏感に感じ取っているのがスズキです。
スズキは他社にないサイズで隙間クラスのクルマを市場に投入し、そのなかでも車種の展開が少ないコンパクトSUVに、イグニスとクロスビーをもっています。
この両モデルは取り回しの良さが一つの魅力でもあり、大き過ぎないことが評価され底堅い人気をもつクルマです。
そしてこのクラスに満を持して参入して来たのがライバルであるダイハツです。
ダイハツでは新しいプラットホームとCVTを搭載した、コンパクトSUVロッキーを発売し、スタイルはトヨタRAV4に似て、直線的なラインのワイルドな外観をまとっています。
今回は国内ジャストサイズともいえるコンパクトSUV、ダイハツロッキーとスズキクロスビーを比較してみます
ロッキーとクロスビーのスタイル
ロッキーは張り出したフロントフェンダーから、緩やかなカーブを描くサイドパネルへとつなげ、シンプルさが強調される面構成です。
ホイールアーチを強調するようなクロスビーは、スプラッシュガードを設け、サイドでSUVらしい雰囲気と強さを作り出します。
直線的なラインで構成するロッキーのフロントは、大型のバンパーが強さを表現しSUVらしいゴツイ表情を作り出しています。
クロスビーは丸形のヘッドライトが象徴するように、柔和な印象の顔つきが特徴的で、角を丸めた優しいラインが目立ちます。しかし、フェンダーの膨らみのは大きく、ワイドで安定感のあるフロントです。
ロッキーはAピーラーを傾斜させスポーティーなカッコ良さも追求するスタイルです。クロスビーは直立に近い角度のAピラーで、バン的な雰囲気を作り出し、箱型のもつ逞しさがあります。
クロスビーのタイヤハウスの大きな隙間は、いかにも悪路走行も行けますと、アピールする部分でSUVの雰囲気作りに上手く貢献しています。
フロントと同様に直線的なラインと大型バンパーで、リアスタイルを構成するロッキーは、台形で安定感のあるカタチです。
クロスビーは独自性の高いリアスタイルが特徴的で、縦型のリアコンビネーションランプを配置し、ゆるキャラに通じるようなデザインです。
後方から見るとロッキーのウェストラインは、リアに向かい高くなる緩やかなウェッジシェイプで、クロスビーは水平なラインが最後になって跳ね上がるデザインです。
リアゲートの傾斜はロッキーが強くつけられ、クロスビーは緩やかな角度で立ち上がっています。
ロッキーとクロスビーのサイズ
ロッキーPremium | クロスビーMZ | |
全長(mm) | 3,995 | 3,760 |
全幅(mm) | 1,695 | 1,670 |
全高(mm) | 1,620 | 1,705 |
スペックではクロスビーの全長と全幅は、ロッキーより小さいのですが、全高が高いためにそれほどの違いは感じられず、クロスビーの全長がやや短いかなと感じられる程度です。
スタイルは両車ともにそれぞれの特徴をもち、ロッキーは都市型のSUVながらも、直線的なラインでワイルドな雰囲気を漂わせ、クロスビーは柔和さと逞しさを合わせもつ、バンスタイルのSUVに仕上げています。
外観の分かり易さではカッコ良さも意識した、スポーティテイストのロッキーが一般受けすると思われますが、クロスビーの独特のスタイルも、個性を出すには面白い選択だと思えます。
明確に方向性の違いをみせるインテリア
ロッキーのインパネはセンターが運転席側に傾けられ、コックピット感を演出するスポーティなデザインです。
先進的な機能や目を引くような加飾もなく、インテリアはシンプルでスタンダードに仕上げられていますが、クラス相応の良い雰囲気は備えており、無理に背伸びをしなかったことが好印象の室内を作り上げています。
クロスビーはハスラーに習い鮮やかなカラーのインパネが特徴的で、スズキの遊び心を感じさせるデザインです。
水平なラインを基調にした造形は収納を意識し、助手席前の深いトレイも実用的で、ドリンクホルダーも角型の容器に対応しています。
やや、メーターナセル上部の厚みが気になるのですが、機能的に使うことを目指したインパネは、バン的で無骨な印象も与える仕上がりです。
メーターはロッキーがタコメーターなどの表示方法を、切り替えられるフル液晶のインフォメーションメーターを採用し、クロスビーは0指針が真下を指すレーシーな、スピードメーターとタコメーターを備えています。
表示面はロッキーが広いため表示方法にゆとりがあり、見易く読み取りやすいように感じられ、クロスビーは狭い中に様々な表示を詰め込んだ感があり、0指針のメーターも市街地の走行では、下側の位置を指すことが多く見辛い印象です。
センターコンソールにATシフトノブを備えるロッキーと、インパネシフトを採用するクロスビーはクルマの方向性が良く表れています。
スポーティテイストでシーケンシャルシフトのロッキーは、積極的にシフト操作を行うことを前提として考え、パーキングブレーキもレバー式です。
クロスビーはセンターコンソールも廃し、パーキングブレーキも足踏み式として広さを求めた配置です。
パドルシフトを採用しているためハンドルから手を放さずに、素早いギアのアップダウンが可能です。
ロッキーはファブリックとソフトレザー調の、ホワイトステッチを入れたシートでスポーティな仕上げです。
クロスビーのシートはカラフルなカラーのパイピングを使い、鮮やかな印象をもたせるデザインです。さらにMZのシートには撥水加工が施され、アウトドアの使用でも気兼ねなく使える仕様です。
ロッキー、クロスビーともにリアシート足元の広さは十分にあり、大人でも不満の出ない余裕ある空間を確保しています。また、クロスビーはリアシート用のパーソナルテーブルも備わり(MZのみ)、アメニティにも気が配られています。
しかし、ロッキーのリアシートは固定式で広さが変わらないのですが、クロスビーは移動式のため、リアシートの位置によって荷室のラゲッジスペースが変わります。
そのため、足元を広げると積める荷物が少なくなり、荷物を多く積むとリアシートが窮屈になってしまいます。
さらに、ロッキーのリアシートは6:4分割で背もたれが倒れますが、クロスビーは5:5となっていて、真ん中に座る人の乗り心地がクロスビーは悪くなります。
ロッキーとクロスビーの室内の広さ
ロッキーPremium | クロスビーMZ | ||
室内 | 長さ(mm) | 1,955 | 2,175 |
幅(mm) | 1,420 | 1,355 | |
高さ(mm) | 1,250 | 1,280 |
室内は両車の違いを象徴するように明確に分かれていて、ロッキーは都市で使うための、スポーティーさを強調するインテリアで仕上げ、クロスビーはアウトドアのアクティブなシーンも想定した、機能的で使える室内を目指しています。
どちらも変な高級感は追求せず(コストの兼ね合いでできなかった?)、方向性がハッキリとしたインテリアは、コンパクトクラスと割り切った好感がもてます。
室内の長さはスペックでクロスビーが上回っているのですが、実際にはそれほどの違いがなく、リアシートはロッキーに余裕が感じられます。
これは全長の長さが235mm短いクロスビーが、移動式リアシートで足元の広さを作り出しているためで、その広さは荷室とのトレードオフの関係にあります。そのため乗員の快適性か荷物を多く載せるかの選択を迫られます。
幅に関してはロッキーがクロスビーをスペックでは上回りますが、クロスビーは全高が高く室内の頭上空間にも余裕があるため、実際には違いがあるほどの差は感じられません。
荷室はロッキーが広いがクロスビーは防汚フロアでアピール
荷室はロッキーが369L(VDA法)クロスビーは非公表です。クロスビーはリアシートがスライド式のため、容量の調整が可能ですが絶対的な広さは、ロッキーがクロスビーを上回っています。
クロスビーはハードな防汚フロアをもつところが、ロッキーよりも有利な部分で、汚れたものや濡れたものを気にすることなく積める仕様です。
荷室フロア下の容量はロッキー80L、クロスビー81Lと互角の大きさです。積む荷物にもよりますが使い勝手は、ロッキーの形状が多くの荷物に対応すると感じます。
ロッキー、クロスビーともにリアシートを倒すとフラットになるのですが、クロスビーはよりフルフラットなフロアを実現させ使い易くなっています。
2WD | ロッキーPremium | クロスビーMZ | |
荷室(2WD) | 上段(L) | 369 | No data |
下段(L) | 80 | 81 | |
Total(L) | 349 | No data |
ロッキーとクロスビーの装備を比較
2WD | ロッキーPremium | クロスビーMZ(2トーンカラー・3トーンコーディネート仕様) |
2トーンカラー | 標準装備(カラーにより追加料金あり) | 標準装備 |
3トーンコーディネート | - | 標準装備 |
ターンランプ | シーケンシャルタイプ | ノーマルタイプ |
ヒーテッドドアミラー | オプション | 標準装備 |
ドアミラー格納 | オート | リモート |
エンジンモード切替 | パワーモード | - |
ルーフアンテナ | シャークフィンタイプ | ポールタイプ |
フロントウィンドガラス | UV&IRカット/遮音 | UV&IRカット |
マニュアルモード | シーケンシャルシフト | パドルシフト |
USBソケット | 標準装備(3個) | オプション |
エコクール | - | 標準装備 |
フットイルミネーション | 標準装備 | オプション |
シート表皮 | ファブリック×ソフトレザー調×白ステッチ | ファブリック×撥水加工(座面)×カラーパイピング |
リアシートスライド | - | 標準装備 |
センターコンソール | 標準装備 | - |
リアシートパーソナルテーブル | - | 標準装備 |
リアシート分割 | 6:4 | 5:5 |
荷室フロア | ノーマルタイプ | 防汚タイプ |
ロッキーのPremiumグレードは2トーンカラーのみで、少しやり過ぎの設定とも思えますが、装備は充実しており概ね必要なものは標準で備わります。
シーケンシャルタイプのターンランプや、シャークフィンタイプのアンテナなど、外装を飾るアイテムをしっかりと取り入れ、室内には必需となりつつあるUSBソケットを装備します。
クロスビーは2WDでもヒーテッドドアミラーが備わり、室内のでアメニティ用にリアシートパーソナルテーブルが装備されます。また、アクティブな使い方に対応するシートの撥水加工や、荷室の防汚フロアをもつのが特徴となっています。
ドライバー支援の予防安全運転システムの比較
ロッキーPremium | クロスビーMZ | ||
衝突被害軽減ブレーキ | 車両 | 速度差30~80km/h | 自車速度5km/h~50km/h |
人 | 速度差30~50km/h | 自車速度5km/h~30km/h | |
アダブティブクルーズコントロール | 全車速追随機能 | クルーズコントロール機能のみ | |
レーンキープコントロール | 60km/h以上 | - | |
車線逸脱抑制 | 60km/h以上(警報・ステアリングアシスト機能) | 60km/h~100km/h(警報のみ) | |
誤発進抑制 | 前進 | 10km/h以下(ブレーキ機能) | 10km/h以下(抑制のみ) |
後退 | 10km/h以下(ブレーキ機能) | 10km/h以下(ブレーキ機能) | |
ブラインドスポットモニター | 標準装備 | - | |
リヤクロストラフィックアラート | 標準装備 | - | |
オートマチックハイビーム | 30km/h以上 | 30km/h以上 | |
標識表示機能 | 標準装備(進入禁止のみ) | - | |
全方位モニター | オプション | オプション |
ドライバーを支援する予防安全システムでは、クロスビーよりロッキーが充実しています。
ロッキーは高速道路の渋滞時に重宝する、全車速追随型のアダブティブクルーズコントロールや、車線逸脱時のステアリングアシスト、誤発進抑制機能に前・後進とものブレーキアシストなどを備え、Premiumにはブラインドスポットモニター、リヤクロストラフィックアラートも標準装備です。
発進加速が鋭いロッキー クロスビーは直進指向の走り
ロッキーPremium | クロスビーMZ | ||
エンジン | 排気量(L) | 996 | 996 |
最高出力(PS/rpm) | 98/6,000 | 99/5,500 | |
最大トルク(kgf・m/rpm) | 14.3/2,400~4,000 | 15.3/1,700~4,000 | |
モーター | 最高出力(PS/rpm) | - | 3.1/1,000 |
最大トルク(kgf・m/rpm) | - | 5.1/1000 | |
車両重量(kg) | 980 | 960 | |
トランスミッション | CVT | 6AT | |
ホイールベース(mm) | 2,525 | 2,435 |
ロッキー、クロスビーともに1Lターボエンジンを搭載し、走りは活発で不満のない動力性能を発揮しています。
スペックを見るとクロスビーのエンジンが、低回転域からパワーを発揮する仕様で、モーターもアシストすることから、ロッキーをリードすると思われますが、実際のフィーリングはロッキの出足が速く、クロスビーを上回る加速性能を感じます。
これまでダイハツ車の発進加速は明らかにスズキ車に負けており、低速域でのドライバビリティは、圧倒的にスズキのクルマが勝っていました。
しかし、DNGAによる改革はこの弱点を払拭し、新たなCVTはアクセルの踏み込みに応じ、素早くロッキーを加速させスタートダッシュが始まります。
クロスビーの発進加速が決して遅いわけではありませんが、ロッキーの出足は想像以上に鋭く、敏感に右足に反応する感覚が非常に楽しく感じられます。
さらに、Dassistを使いパワーモードに入れると、やんちゃな性格が表れ1Lターボとは思えないほどの、痛快で胸のすく走りをみせます。
クロスビーはホイールベースの短さによる、落ち着きのなさを嫌ったためか、徹底して直進安定性を高める方向へと走りを振っています。
そのため真っ直ぐに走るにはしっかりとした手応えがあり、コンパクトクラスを感じさせない安心感があるのですが、カーブでは曲がり難くキビキビとした小気味いい走りは苦手としています。
また、カーブでの安定性も直進時に比べると、不安定に感じさせる場面があり、パドルシフトを使っても、走りのリズムに乗れないもどかしさを感じます。
タイヤサイズがクロスビーはロッキーより1サイズ小さく、安定性では不利と思われますが、カーブでの落ち着きはもう少し欲しいところです。
ロッキーPremium | クロスビーMZ | |
タイヤサイズ | 195/60R17 | 175/60R16 |
最低地上高(m) | 185 | 180 |
最小回転半径(m) | 5.0 | 4.7 |
燃料消費率JC08モード(km/L) | 22.8 | 22.0 |
なお、JC08モードの燃費性能ではマイルドハイブリッドのクロスビーより、ロッキーが優れており、最低地上高も高く悪路での走行も有利となっています。
クロスビーはホイールベースの短さを活かした、小さな最小回転半径が特徴で、小回り性能ではロッキーを上回っています。
走りの質を求めるならロッキー ワクワクの楽しさならクロスビー
ロッキーとクロスビーは同じコンパクトクラスのSUVですが、それぞれにコンセプトの違いは、車造りにハッキリと表れています。
ロッキーは都市型のSUVを目指し、その基本のマインドはスポーティーであることです。
外観はワイルドな雰囲気をもちながらも、無骨な印象のないスマートなスタイルが特徴で、室内も走る気分を盛り上げるインテリアです。
また、走りのパワフルさも大きな魅力で、コンパクトクラスとは思えないほどの動力性能です。
クロスビーは走りを追求するのではなく、アウトドアで楽しくクルマを使うことを目指し造られています。
アクティブなシーンに対応するため、撥水加工のシート、荷室の防汚フロア、リアシートパーソナルテーブルなど使うための装備が整えられいます。
エクステリアもバン的な雰囲気をもつSUVに仕上げられており、オンロードよりもオフロードが似合うスタイルです。
このことから走りの質を求めるならロッキーが良く、ドライバー支援の機能も充実しています。クロスビーはアウトドアライフを楽しむのに向いており、出かけたくなるようなワクワクする仕掛けを用意しています。
ロッキーPremium | クロスビー(2トーンカラー・3トーンコーディネート仕様) | |
メーカー希望小売価格 | 2,200,000円 | 2,084,500円 |
ただし、ロッキーは豊富な装備と予防安全機能が車両価格を引き上げていて、価格はクロスビーより高く、2トーンカラーのみの仕様となるPremiumは、選ぶカラーによりさらに費用が必要です。
クロスビーは2トーンカラー・3トーンコーディネートでも、カラーにより金額の違いがなくお得に思える設定となっています。