新型「カムリ」が狙うのはセダンの復権
ビューティフルモンスターのサブネームが与えられた、10代目となる新型「カムリ」がデビューしました。
「カムリ」はトヨタのミドルクラスFFセダンとして、室内が広く実用的で保守的なラインを感じさせる車でしたが、今回の新型「カムリ」では、「ハイパワーでスポーティ、あの頃、クルマは熱かった」と、トヨタ1980年代のスポーティな車と重ねて、エキサイティングな車であることをアピールしています。
新型の「カムリ」は旧型と比較すると、ホイールベースが50mm延ばされ、全長は+35mm、全幅+15mm、全高−25mmです。
僅かなサイズアップではあるのですが、低くなった全高のために、車幅が数値以上に広く感じられ、堂々たる雰囲気のセダンとなっています。
「クラウン」の全幅1,800mmと比較しても、新型「カムリ」の全幅は1,840mで、感覚的なものだけでは無く、実際にワイドな車体であることが分かります。
新型「カムリ」のグレードは“Gレザーパッケージ” “G” “X” 3タイプで、シンプルな構成となっています。
搭載されるエンジンはDYNAMIC FORCE ENGINEと呼ばれる、新開発の直列4気筒2.5Lエンジンで、熱効率を高めた仕様です。
このエンジンに組み合わされるハイブリッドシステムは、実績のあるTHS IIでハイパワーと省燃費性能の両立を実現させています。
今回の試乗車となったのは “Gレザーパッケージ”で「カムリ」の最上位グレードです。
大陸的な雰囲気が伝わるエクステリアデザイン
トヨタキーンルックのフロントは、現在のトレンドになりつつある、上下の高さを抑えたヘッドランプで、シャープな顔付きになっています。
低重心プラットフォーム「TNGA」により、ボンネットフードを低くすることが可能となり、それに合わせてベルトトラインを水平に近いラインで構成しています。
これによりグラスエリアが大きくなり、広い視界の確保に繋げています。
絞り込みが無いと言える程に張り出したリアスタイルは、ボリュームを感じさせます。
リアコンビネーションランプは、エアロスタビライジングフィンと呼ばれる形状を採用して、空力効果を高めています。
リアウィンドからリアトランクへ、なだらかに流れるラインはファストバック風なデザインで、スマートなセダンを演出しています。
新型「カムリ」のエクステリアは、「クラウン」のような細部に拘る日本向けセダンとは違い、ダイナミックなラインで構成され、アメリカなど大陸を強く意識したデザインに思えます。
新開発の直列4気筒2.5Lエンジンは、最高出力178PS/5,700rpm、最大トルク22.5kgf・m/3,600~5,200rpmで、モーターは最高出力120PS、最大トルク20.6kgf・mの性能です。エンジン+モーターのシステム最高出力は、211PSとなっています。
燃費性能は28.4km/Lとなっています。
タイヤサイズは235/45R18で、タイヤはブリジストントランザが装着されています。
Gレザーパッケージは明るい色調で上品な印象
インパネは高さを抑えて上部をフラットに近い形状で仕上げています。
センターパネルは独特の形で、左右が非対称なのですが、上手くバランスさせています。
2眼式のメーターは右側にスピード、左側にハイブリッドシステムインジケーター、センターにマルチインフォメーションディスプレイが配置されます。
セダンとしては小径タイプのステアリングが採用されています。
インパネが上部に向けてラウンドしているので、圧迫感が無く広がりを感じさせます。
落ち着いた色調のレザーシートは、触感も良く上品な仕上がりです。
FFですがリアシートには、センタートンネルの張り出しがあり、センターに座る人は足の置き場に困りそうです。
トランクルームはVDA法524Lの広く大きな容量が確保され、フロア下には始動用バッテリーが収められています。
トランクスルーシステムが採用されて、トランクに収まらない長尺物でも積めるのは、大きなメリットです。
スマートでパワフルセダンの良さが伝わる走り
新型「カムリ」の第一印象は、やはり「グローバル規格のセダン」と思わせるサイズで、狭い駐車場などに入るには、躊躇するような大きさです。
室内はクリーム色に近いレザーシートで、上品で明るい雰囲気を漂わせています。
電動でアジャストされるシートに収まり、ドライビングポジションをとると、足元から腰辺りまでは、コックピットに収まるような包まれ感を感じますが、それよりも上は開放感が感じられます。
運転席からの視界は、「TNGA」により低いボンネットフードと、高さを抑えたインパネの相乗効果で、先端の位置が掴み易くなっています。
直線的な配置となった、ATシフトレバーをDレンジ入れ走りだすと、1,600kgの重量がある新型「カムリ」の車体は、スルスルと動き出し反応の良さが覗えます。
ドライビングしても、この反応の良さは変わらず、アクセルを踏み込むと躊躇することなく加速を開始し、新開発された2.5Lエンジンと、熟成が進む「THSⅡ」の組み合わせは、ジェントルなパワフルさをみせます。
小径ステアリングは初期の反応が早く、少ない操舵にフロントは機敏に反応し、リアもしっかりとした接地感があり、セダンのボディの有利さが伝わります。
但し大柄なボディと重い車重は、常にそれを意識させる動きと感覚が、ステアリングを通じて伝わりますので、コンパクトカーを振り回して乗るような感覚とは違うものです。
18インチのタイヤを標準で装備する試乗車は、コーナーでの踏ん張りが効く反面、乗り心地ではやや粗さを感じさせる部分があります。
コツコツとした低扁平率タイヤの、突き上げは良く抑えられているのですが、バネ下重量が重いことが要因と思える、リアタイヤのバタつきが感じられます。
不快になる程ではないのですが、小さな段差でもこの傾向が現れるので、車の性格を考えるとやや気になる部分です。
新型「カムリ」はセダンの美しさを追求し、そのボディ構造に伴う操縦性の高さと、乗り心地の良さを持ち合わせ、ハイブリッドシステムは、省燃費でありながらパワフルでスポーティーな走りを実現させています。
少々、大きめの車体で取り回しに気を使いそうですが、美しく迫力のあるセダンはSUVやミニバンには無い、フォーマルな雰囲気も備えています。
試乗したGレザーパッケージのメーカー希望小売価格は、4,195,800円となっています。